図書館から外を見ると、建物の三方に大きな縦長の窓が並んでいるのがわかると思います。建設当初の大閲覧室は、この窓から存分に光を取り入れる、二階吹き抜けの大空間でした。この階段手摺は、その大閲覧室の壁沿いに巡らされたギャラリーに登るための階段です。いちばん太い親柱に付けられた装飾は、蓮がモチーフになっています。これとは少し形は違いますが、蓮の装飾は日本でもよく使われるモチーフです。たまに社寺仏閣の欄干と呼ばれる手摺の部分に、蓮を逆さまにした「逆蓮」をいう装飾を見かけるのではないでしょうか。建築家がこの装飾を選んだその意図は定かではありませんが、洋風建築に、日本の伝統的なモチーフを隠したのかもしれませんね。(テキスト:本橋仁/京都国立近代美術館)

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