みなさんは、20年前、どんな道具を使って生活していたか覚えておられますか? 以前この欄で、世界最古の目録から現在にいたる目録のカタチを駆け足で御紹介しましたが、今回は、20年前の目録作成の様子を私の体験からお話しさせていただきます。

ちょうど20年前、医学図書館に就職した私の最初の仕事は、「洋書の目録をとる」ことでした。関係者の間では、「ヨウモク担当」なんて言ったのですが、友達には、「外国たばこの仕事?」と、聞き返されたりしたこともあります。

「洋書の目録をとる」と、ひとことで言いましたが、どんな作業でしょうか。

外国語の図書を見ながら、小さな図書館目録用カードに、電動タイプライターを使って、書名や著者名、出版者や出版年、ページ数、大きさなどを目録規則に従ってタイプしていきます。現在は、コンピュータで目録データを作成するので、綴りを間違った場合の修正も簡単ですが、当時は、誤ってタイプしてしまったり、必要事項をタイプし忘れた場合は、文字を剥がしたり、新しいカードに打ち直したりと大変でした。それでも、高校時代に手動タイプライターをかじっていた私にとっては、電動タイプライターはとても便利で感動しながら使ったのを覚えています。目録規則を読み込んだり、分類を与えるために、英語やドイツ語の医学専門用語を調べたりしながら、カードを修正したり、打ち直したりしていたので、はじめは、1冊の目録をとるのに1日もかかってしまいました。

ちなみに、日本語の図書目録をとるお手伝いもしましたが、こちらは、手書きか和文タイプライターで作成していました。和文タイプライターというのは、活字を拾いながらタイプしていくもののようでしたが、私は使ったことがありません。もっぱら手書き専門でした。必ず黒の万年筆で記載することになっており、こちらも書き損じたり、目録にぬけがあった場合の手直しはやっかいでした。当時できた小さなペンだこも、キーボードを打つ自分の手を今ながめてみると、いつのまにかなくなっています。

さて、ようやくカードができあがると、今度は、それを目録カード専用コピー機にかけます。書名順のカード目録や著者名順のカード目録をつくるため、必要な枚数をコピーします。現在は、コンピュータにデータをひとつ入力しておけば、いろいろな部分から探しだせるので、随分便利になりました。カード目録時代は、探したい数だけ、カードをコピーする必要がありました。ただ、当時の先輩によると、コピー機が登場する以前は、目録カードの作成と複製は、鉄筆でガリ版を切り、印刷して切り離し、乾かしていたそうで、20年前は20年前で、それ以前より随分便利になっていたようです。「鉄筆でガリ版を切り」というのが、おわかりにならない方に丁寧に説明すべきところですが、長くなりそうなので御容赦願えるでしょうか。
コピーしたカードに、書名や著者名の見出しを必要に応じてタイプし、それぞれの目録カードボックスの正しい場所に繰り込めば、やっと目録の完成です。目録カードが間違っていたことに気づいたら、複写した枚数分のカードを引き抜かねばなりません。なかなか根気のいる作業です。

さて、その後、1年、2年と経験を積むうち、1日にとれる目録の数が増えたのはもちろんですが、目録をとる道具の方も随分便利になりました。技術進展の速度が早くなっているので、20年後の目録作業は、随分とかわっていることでしょう。コンピュータって何? なんてことになっているかもしれませんね。(よ)