No.22 国書総目録 ‐総合目録の今昔‐

私が大学で図書館学を学んだ時、文献の所在を調べるための基本的ツールとして一番初めに教わった「総合目録」は『国書総目録』でした。私は国文学科に在籍していたので、図書館学だけでなく国文学に関しても、度々この目録のお世話になりました。

 

 

 

 

 

 

今回はその目録、『国書総目録』についてお話します。
「総合目録」とは、複数の図書館の蔵書を一つの目録にまとめたものです。ある資料がどの図書館にあるのか、所在を確かめるのに役立ちます。
『国書総目録』は、近世以前に日本人によって書かれた書物の所在等を知ることができる、日本の代表的総合目録の一つです。詳しい内容や活用例は当館の館報『図書館きょうと』No.42(p7「レファレンスの事例から:昔の資料を見たいのですが」)を参照してください。

書物の所在情報を集めて一つの目録にするといっても、インターネットなどない時代、その作業にかけられた労力は並大抵のものではありませんでした。
『国書総目録』は、戦前(昭和14年)から戦後(昭和35年)にかけて400以上の図書館等から蔵書目録(刊行された目録のない場合は目録カードの写し)を集め、書籍情報を記したカードを並べ替えて編集された模様です。戦時中にはカードを疎開させて戦禍から守り、戦後は戦災で消失したものや社会情勢の変化にともなう書籍の移動を考慮して、新たにカードを採集しなおしたといいます。集まったカードは約170万枚にのぼり、編纂に関わった人は100名を超えるそうです。
第1巻の刊行は昭和38年(1963年)、最終巻が昭和51年(1976年)。昭和14年(1939年)の事業着手から完結まで38年もの歳月が費やされたことになります。その後も追加訂正され、平成元年(1989年)に『国書総目録 補訂版』が、平成2年(1990年)には続編にあたる『古典籍総合目録』(全3巻)が刊行されています。

目録編纂は現代においても大変な作業ですが、技術の進展に伴い、方法やカタチは変貌を遂げました(コラムNo.4「目録のおはなしその2:目録のカタチ」参照)。従来冊子体でつくられていた総合目録もデータベース化が進み、インターネットを通じて複数館の最新所蔵データを検索できる横断検索が普及するなど、書物の所在調査も随分便利になっています。
『国書総目録』と『古典籍総合目録』も、現在では国文学研究資料館のホームページ「日本古典籍総合目録」)で検索することができます。これにはさらに新しいデータも追加されており、「新国書総目録」ともいえるでしょう。
利用者が求める資料をより早くより確実に見つけられるように。今も昔も目録に込められた思いは同じです。人々の知と努力の集積は、カタチを変えながら今も受け継がれています。(ゆ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

参考文献
資料名 請求記号 資料コード
『国書総目録』1~9巻
岩波書店 1963~1976
/025.1/Ko53/1
ほか
1100335452
ほか
『国書総目録 補訂版』1~9巻
岩波書店 1989~1991
/025.1/Ko53/1
ほか
1101570545
ほか
『古典籍総合目録』1~3巻
国文学研究資料館編 岩波書店 1990
/029/Ko45/1
ほか
1101570529
ほか
『情報源としてのレファレンスブックス 新版』
長澤雅男・石黒祐子共著 日本図書館協会 2004
/015.2/N22/ 1108214998