今までのコラムで、目録データの中の、書名や著者名を記録するときに基準となるきまりについて、お話しする機会が何度かありました。例えば、書名についてのきまり(注1) や、著者名についてのきまり(注2)です。これらのきまりをまとめた本が『日本目録規則』(略称:NCR)で、目録担当者が手放すことができない3冊のルールブック(注3)のうちの1冊です。いきなり、今までのコラムのおさらいのようになってしまいましたが、今回は、この目録規則のお話しをしたいと思います。

さて、ここに、今からちょうど100年前の明治39(1906)年に出版された『京都府図書館蔵書目録』があります。目録データを見ると、書名、出版年、著者名、分類、(分類ごとの受入)番号、冊数の6項目について記載されています。残念なことに凡例がないので、詳しいデータの見方や使用方法、何をもとに目録データを作成していたかわかりません。この『京都府図書館蔵書目録』が作られた頃、日本には目録データを作成するための基準となる「目録規則」はあったのでしょうか。今から約100年少し前にタイムスリップしてみましょう。

日本では、1893年に「和漢図書目録編纂規則」という目録規則が日本文庫協会によって制定されました。『京都府図書館蔵書目録』が作られた頃、目録規則は存在したのです。明治33(1900)年に文部省が編纂した『図書館管理法』に附録としてこの目録規則が掲載されています。これを見ると、「書名ハ表紙或ハ其裏面又ハ巻首ニ記セル表題ノ中最モ詳細ナルモノヲ取リ」とあります。著者名の規則の中には、「結婚シタル婦人其他姓名ヲ変換シタル人ハ最後ノ名ヲ取ルベシ」などという規則もあります。書名、著者名をどのように記録するのかに始まり、出版地や出版年、図書の大小等、どんな項目を記録するかが、6ページに渡ってまとめられています。いま私たちが使用している目録規則に比べると、規則の数は随分少ないですが、記録する項目はよく似ています。

「和漢図書目録編纂規則」誕生後、目録規則は数々の論議を経て、標準化が図られてきました。戦後には、日本図書館協会刊行の『日本目録規則』が出版され、今でも版を重ねています。今年の6月に出版された『日本目録規則 1987年版 改訂3版』を見ると、図書だけではなく楽譜や電子資料、点字資料等の13の資料類ごとに規則がまとめられ、総ページ数445ページとなっています。先ほど御紹介した「和漢図書目録編纂規則」が6ページだったことを考えると、約100年の間に図書館で収集する資料も多種になり、規則も増えたことがよくわかります。

図書館では、長年に渡ってたくさんの本の目録データを作成してきました。目録規則は、現状にあわせて見直され、改訂、改版されていますので、データの採り方は過去から現在において、完全に一貫したものではありません。しかし、何の基準もなく、目録作成の作業に関わる人が、それぞれの判断で好きなようにデータを作成していたら、どうなっていたでしょう。目録規則があったからこそ、現在でも利用可能な目録データを、長い年月に渡って蓄積することができました。そして、積み重ねたものを、これから先の時代にも引き継いでいくことができます。いつでも誰でも使えるように収集、整理、蓄積された資料は人類の財産です。資料を整理するのに欠かせない目録規則は、100年以上前から受け継がれた、人類の財産を支える図書館員の心なのです。(み)

参考文献 ・ コラムで御紹介した図書
資料名 請求記号 資料コード
『京都府図書館蔵書目録 和漢之部 第1編』
京都府図書館 1906
 /029.2/KY6  1103550875
『図書館管理法』 文部省編纂
金港堂書籍 1900
 /010.1/MO31  1103505895
『日本目録規則 1987年版 改訂3版』
日本図書館協会目録委員会編
日本図書館協会 2006
 /014.32/N71  1108361443
『資料組織概説』 大城 善盛[ほか]共著
樹村房  1998
 /014/O77  1106028564