団伊玖磨さんの『パイプのけむり』と聞いたら、何を思い浮かべますか?  ベテラン司書の領域に足を踏み入れる資格のある年齢にさしかかった私は、「巻次」のことを思い浮かべます。今回は、「巻次」のお話しをさせていただきます。

さて、目録でいう「巻次」ですが、みなさんが思い浮かべられたイメージとだいたい同じではないかと思います。「第1巻」「第2巻」とか、「上巻」「下巻」といった、複数冊でシリーズになっていたりセットになっている資料について、1冊ずつ目録データを作成する場合に「巻次」として記録するものです。書名が同じ場合は、本を見分ける重要な鍵となります。

では、少し応用問題にうつります。書名に「続」とか「新」とかいったことばがついているとき、巻次として目録に記述されるのはどちらでしょう。一般的には「続」は巻次として記述しますが、「新」は書名の一部として記述します。『続・百選の棚田を歩く』という本がありますが、当館の目録では、書名が「百選の棚田を歩く」、巻次が「続」となっています。もともと『百選の棚田を歩く』という本があり、『続・百選の棚田を歩く』は、その続巻、2冊目になるので、「続」を巻次として記述しています。一方、「新」は2冊目というより、以前刊行された図書の内容を改めて発行したり、単にその本の内容が新しいということを表すためだけに使われたりもしますので、書名の一部となります。とはいえ、実質的に続巻ではない「続」を書名の一部として記述し、実質的に続巻と考えられる「新」を巻次として記述することもあります。

「続」が「巻次」として目録に記述されていることが多いという話をしたときに、「えー!!そんなことわかるの図書館員だけやん!なんでそんなことすんの?!」と、責められたことがあります。確かにそういう面もあるかもしれませんが、もともとは「続」を巻次として扱った方が、書名順のリストやカード目録を探すときに、1冊目と2冊目にあたる続編が一緒に並んでいて便利だったのでしょう。コンピュータ時代の今は、「続」や「新」がついている本をうまく探せないときは、「続」や「新」を省いて検索してみることをおすすめします。

目録データを作成する際にはルールがありますが、本を出版する人が書名を決める際はそのルールにのっとって書名を決めるわけではありません。実際に出版された本の書名を目録データとしてどう記述するか考えるとき、ルールを見てもすっきりしないこともあります。その結果、図書館によって採用している目録の書名が異なることもあります。何を書名として目録に記述し、何を巻次にするかは、簡単なようで大きな悩みです。ベテランと呼ばれる年齢に足をかけても、なかなか迷いがなくなるものでもありません。

さて、『パイプのけむり』の例ですが、私が新人司書となる以前、目録の勉強をした際に「続」の応用編として紹介されていた典型的な事例と記憶していたので、今回例にとるつもりで探し直してみました。すると、国立国会図書館の蔵書目録では、私の記憶どおり、書名「パイプのけむり」に対して、巻次「続」「続々」のほかに「まだ」とか「まだまだ」とか、「重ねて」「さてさて」「なおかつ」「なおなお」はたまた「ひねもす」などたくさんのことばが巻次としてでてきました。しかし、京都府立図書館の蔵書検索で「パイプのけむり」と検索してみると、「続パイプのけむり」「まだまだパイプのけむり」「ひねもすパイプのけむり」などが書名として採用されていました。驚いて、目録についての図書を数冊調べてみましたが、「パイプのけむり」の例がでている本にあたりませんでした。書名の一部を巻次としてとるおもしろい例ではありますが、どの教科書にもでてくる典型的な事例というわけでもないようです。なにごともあたり前、と思いこまずに、初心に戻ってとりくむべし、ということを思い返した、今回のコラムでありました。(よ)

 


 

 

参考文献
資料名 請求記号 資料コード
『和書目録法入門』
柴田正美/編  日本図書館協会 1995
/014/SH /  1101757449