こんな本、あります No.41『チェリー・イングラム』
日本中が桜の色に染まり始める季節がやってきました。
桜は日本の花、というイメージが強いですが、外国でも桜の姿を見ることができます。
この本では、日本の桜が、イギリスの桜研究家コリングウッド・イングラム(1880-1981)によって海を渡ったことが書かれています。日本では多様な品種開発が行われていたため、彼はたびたび日本を訪れてはさまざまな品種をイギリスに持ち帰りました。日本が桜の品種に対する関心を失いつつあった時も、品種減少に危惧感を抱いたイングラムは日本の桜とヨーロッパ原産のサクラを交配させて多くの新種を作るなどして、桜の品種保存に貢献してきました。特に日本で絶滅したと思われていた「太白(たいはく)」という品種の桜がイングラム家の庭園にあることがわかった時は、その穂木を5年間の試行錯誤を得て日本に里帰りさせています。この品種は京都府立植物園で見ることができます。
イングラムが京都に滞在した時の様子や、日本の桜がイギリスに大きな影響を与えてきたことを知る一冊です。 <平成29年3月30日掲載>
阿部菜穂子/著 岩波書店 2016.3
(請求記号:289.3/I54 資料コード:1110563184 )