No.5 著者について ―「著者」って誰?―

著者とは誰のことでしょう?一般的には「著者」とはその書物を書いた人という意味で捉えられています。もちろん、図書館でいう著者も、概ね同じ意味です。しかし、図書館の蔵書検索システムで「著者」として検索できるのは、直接その本を著した人のみではありません。

『図書館用語集(三訂版)』によると、著者は「自己の思想や感情を、文字その他の記号を用いて創作的に表現した者」とされます。つまり、絵本の画家や講演集の話し手、作品集を出した陶芸家も著者となります。また、二次的に図書の内容作成に関わった、編者や訳者、校正者なども、著者と同様に扱われます。著者たちが、その著作の中で果たした仕事は、‘著、編、訳、画、作’などの「役割表示」という語で、氏名のあとに示されています。

 人間ではない著者もいます。論文集をまとめた大学や、展示会の図録を作った美術館のような「団体著者」です。京都府立図書館も、事業概要や逐次刊行物の「連絡協力車だより」の著者です。「京都府防災会議」「京都フォーラム」などの会議名も著者とされることがあります。

図書館では、これらの著者をより包括的に表す言葉として「責任表示」という用語が使われています。文字通り、その図書の内容に責任があるものという意味になります。

商品としての図書に責任があるのは出版者ですが、創造物としての図書に責任があるのは著者なのです。

 責任表示や役割表示は、図書の奥付(図書のいちばん最後にある、出版に関する記述)、標題紙(本文の前にあるタイトルページ)、背、表紙などで確認します。書誌データを作るための情報は、その図書の中に書かれていることが基本です。

ただし、例外もあります。

『与謝野晶子の新訳源氏物語』の場合、図書そのものには著者に関する情報として、奥付に「著者 与謝野晶子」と書かれています。しかし、府立図書館のデータベースでは、『与謝野晶子の新訳源氏物語』の著者の項目は、“著者名: 〔紫式部/著〕. 与謝野 晶子/〔訳〕著”として登録されています。古典文学やそれを原本とした現代語訳では、もとの作品の著者は書かれていないことがままあります。そのような時は、〔紫式部/著〕のように原著者を括弧付で補って目録を作成することで、その図書のより正確な情報を提供できるようにしています。与謝野晶子の役割表示についても、実際に近い〔訳〕を補足しています。

『源氏物語』は、与謝野晶子をはじめ多くの作家が現代語訳をしていますが、訳し方の微妙な違いによって、パラレルワールドのように異なる『源氏物語』の世界ができあがっています。二次的な責任者である訳者も、一冊の図書という世界の創造主であることが実感できますが、このような図書の責任者たちの情報を図書館を利用する皆さんに正しくお伝えするため、図書館でも日々目録作成に励んでいます。(ユ)

参考文献 請求記号 資料コード
『図書館用語集(3訂版)』
日本図書館協会用語委員会 2003.11
/010.33/N71/ 1108157270
『与謝野晶子の新訳源氏物語』
角川書店 2001.11
/913.369/Y85/1 1106013921