No.3 「書名」について ―これが私の探していた本?― 

皆さんは、自分の読みたい本が図書館にあるかどうか知りたい時、どうしますか?書名から探す場合は、その書名から思い浮かぶ分野の書架を見てまわるのが早いように思いますが、その書名が必ずしも背表紙に表示されているとは限りません。「えっ?書名の書かれていない本なんてあるの?」と不思議に思うでしょうか。

例えば、月刊『新潮』に掲載されていた「百の谷、雪の嶺」が刊行されたと知ったとします。これは、登山家として有名な山野井泰史さんの体験を書いた物語です。内容から考えると登山関連か小説コーナーの書架にあるはずですが、見当たりません。それはなぜでしょうか?実は、この「百の谷、雪の嶺」は単行書として出版されるにあたって改題され、『凍(とう)』という書名で刊行されているからです。そのため、書架を見てまわるだけでは探し出すことができなかったのです。

このような場合、所蔵図書の配架場所を調べることのできる検索用端末(図書館所蔵目録)を利用して下さい。端末の検索画面で、書名欄に「百の谷、雪の嶺」を入力して探してみると、一件のみ画面に表示されます。しかし、表示された書名は「凍」です。一瞬あれっと思いますが、著者は沢木耕太郎で、探している本の著者と同一人物です。ここで「凍」の資料詳細画面を開いてみると、注記に、「凍」が「百の谷、雪の嶺」の改題であることが記されており、探していた本が「凍」という書名の本であることがわかります。

この本だけでなく、他にも一冊の図書(「凍」)にいくつかの書名(「百の谷、雪の嶺」「新潮」)が関連していることはよくあります。そこで、こういった情報が目録の中ではどう書かれているのかを少し説明します。まず、当館が採用している『日本目録規則』ではどう定められているかをみてみましょう。そこには「注記は、目録作成機関が各書誌的事項の記述に説明を加える必要があると認めたときに記録する」となっています。「注記」というのは、目録として記述した書名や著者名、出版者等に補足説明が必要なときに使います。今回の例のように元の書名が変わったときは、「版および書誌的来歴に関する注記」として記述します。

検索用端末を使うと、「注記」に書かれた情報も探すことができます。目録データの作成年代によって多少の違いがありますので、書名検索で探せないときは、キーワード検索欄で探してみて下さい。書名の一部しか覚えていなくても、あいまいな情報しかもっていなくても、あきらめずにこの端末を利用して、読みたい本をより多く手にしてほしいと思っています。

ちなみに『凍』は、日本小説のコーナーに配架されています。山の魅力と恐怖が紙一重であることを実感させてくれる物語ですので、登山の魅力にどっぷりはまっている人はもちろん、そうでない人もぜひ読んでみてください。(ち)

参考文献 請求記号 資料コード
『凍(とう)』沢木耕太郎著
新潮社 2005
/913.6/Sa94/ 1108321942